yuitohi

公開交換日記 ユイ⇄ヒ

Daydream

電柱の元に黒アゲハが翼をバタつかせながら、落ちている。怪我をしているの、大丈夫、と思って観察していたら急に、私の顔面真横、ふわっと飛んでいった。


ミストみたいな雨の中、自転車を漕いで2つ駅を越え、目当てのものを探すけどそこにはなくて無駄足だったなと一時落胆したけれど、出来事よりも見た景色が脳裏に記憶される私の構造に行動が救われた。半目で見た霞む信号の青や、重さに耐えきれなく腕を流れ彩る雫、緑、急ぎ足で帰路につく少年の足元のステップの記憶、を持ち帰るとその一部は滞っていた創造の一部になって、表へ出ることができた。顔は自然のパック、カサカサの肌に雨のミストが潤いを与えてくれたし。


ひとつかふたつ、それだけが繰り返されるコードの上にちょっとずつ違うメロディーを乗せていくことは、なんだか生活みたいだ。変わらない地続きの道を歩いたり走ったりスキップしたり立ち止まったりする。劇的なことはないけどただひたすら過ぎていき進んでいく。泣きそうになりながら、でも目は涙を流すことはせず、展開を持てない私の音楽は私の人生のようで笑ってしまう。歌うとなんで悲しいと思うんだろう。これだけはずっと謎。サビという概念すらない、それこそ日記のように、つらつらと始まってつらつらとフェードアウトしていく。そんなボイスメモがたまっていく。

夏のある夜、これらを披露しなくてはならないんだけど、そこは多分ウェーイってテンションのパーティーだから、ちょっと怖いけど、仕方ないよね。ウェーイできねええええええファックと思いながらやるぞ。踊れない直立のパーティーの一部が目に見える。

 


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なんでだか、無理やりいきなり仕事として料理もするようになって、明日は挑戦の日なのでその仕込みを今日の大半はしていた。提供するときに思うのは見た目がまず大事だってこと。彩りを考えて作る作業は絵を描くことに似てるな、って気づいたときから新しいメニューを考えるのがとても楽しくなった。次の催しに合わせてヨーグルトの白いキャンバスにキウイで緑を描く。かわいいし、おいしいし、うまくいくといいな、とおもってるけど、初披露はなんでも緊張しちゃうね。

 

 

音楽も料理も、だれかに届くかもしれない希望が重要で、当事者ひとりの手の中にいちゃもったいない。目の前のだれか、一対一で向き合ってそれが届いたときに、羽ばたいて本当になる。緊張も恥じらいも持ったまま、でも、思い切って飛んで。ちょっと苦手だった黒いアゲハ蝶はあのあとどこまで飛んで行ったかな。愛の巣へ帰っていくのか、あてもなくふらふらと空を揺らぐのか、もしかしてどこかにまた立ち止まっているのか。自分を重ね合わせるには美しすぎるけれど、ちょっと私たち似ているな、そんなことを思ってしまった。